福岡は初回、先頭の生島が左中間を破る三塁打で出塁すると一死後、西田の二ゴロの間に生還して先制。追いつかれた直後の4回は二死後、4番磯部が右前打で出ると盗塁を決めて二死二塁とし、轡水俊空のセンター左を破る二塁打で勝ち越し。さらに久保、高木嶺が連続四球を選び二死満塁となったところで東福岡は先発の平本に代えて金光をマウンドに送ったが、8番高木翔の三遊間の当たりをサードがグラブに当ててはじく間に二者が還ってこの回3点を挙げた。
その後も7回一死一、三塁、9回も二死二、三塁と再三得点圏に走者を進めながら、福岡の先発・轡水の前にあと一本が出ず11残塁に泣いた。
————————————————–
体格では東福岡の選手より、ひと回り小さな福岡ナインが殊勲の金星を挙げた。
立役者は何といっても先発の轡水投手。細身の左腕だが、球の出所が見づらいフォームに加え、右打者の胸元に大きな軌道で落ちてくる変化球(チェンジアップか)で東福岡の強力打線を翻弄した。直球はスピードこそないものの、右打者7人を並べた東福岡打線にはこの変化球で胸元を突いた後、内外角いっぱいに投じることで目先をかわす効果があった。東福岡打線には8回を除いて毎回のように安打を許したが連打は許さず、落ち着いて後続を打ち取った。
打線は5安打ながら、先制につながる初回の生島の三塁打、勝ち越しタイムリーとなった4回の轡水の二塁打、この2本の長打が大きかった。いずれも高めに入ってきた直球・変化球を逃さず、コンパクトにはじき返して外野の間を抜いた。4回以降は2人の走者しか出せずに防戦一方だったが、少ないチャンスを確実にものにし、耐えて掴んだ勝利だった。
2番手の金光は5~7回とテンポよく3人ずつで片付けて味方の反撃を待った。8~9回に1本ずつヒットを許したが、気迫のこもった投球で後続を断ち、流れを必死に変えようとした。だがその力投も報われず、県大会を前に姿を消すことになった。
東福岡にとって幸いだったのは、この試合が夏の大会でなかったことだろう。夏のシードはほぼ確定し「南福岡」の優勝候補にも名前が上がってくるだろうが、もう一度兜の緒を締めなおす機会になりそうだ。