【観戦記】九州国際大付12ー11自由ケ丘(選手権大会準々決勝)




 両校あわせて28安打、のべ8人の投手が登板した3時間を超える激戦は、9回に自由ケ丘が6点差を追いついたが、延長10回九州国際大付がサヨナラ勝ちした。九国・山脇サヨナラ打
 同点で迎えた延長10回裏、九州国際大付は先頭の8番・永岡が左前打で出ると、市川が送って一死二塁。中山は三振に倒れたが、2番・山脇が左中間を破り、二塁から永岡がサヨナラのホームを踏んだ。
 序盤から中盤にかけて、優位に試合を進めたのも九州国際大付だった。2点を先制された1回、自由ケ丘の先発・岩田から先頭の中山が左前打。山脇は送る構えを見せず三振に倒れたが、中山が二盗、石橋四球で一死一、二塁とし、4番・渡辺が左前打を放ってまず1点。続く安永も四球で満塁となり、岡田の一ゴロをファーストが本塁へ悪送球、2者が還って逆転した。さらに一死二、三塁から藤本の二ゴロの間に1点を加え、永岡も左翼線二塁打で続きこの回一挙、5点を奪って岩田をKOした。
 2点差となった4回には二死から1番・中山が右翼ポール際へ本塁打。5回はこの回から登板した自由ケ丘の3番手・柳原から3番・石橋がセカンドへの内野安打で出ると、渡辺の投前送りバントが一塁へ悪送球となり、安永四球で無死満塁。ここで代わった4番手・岡本から、途中出場の6番・鳥井の遊ゴロ(二塁封殺)の間に1点。続く藤本はスクイズを決めて、この回2点を加えて8-3とリードを広げた。8-5となった7回は、右前打で出た石橋を渡辺が送り、安永四球で一死一、二塁とすると、鳥井の中前に落ちるヒットでまず1点。暴投で一死二、三塁となった後、藤本が三遊間を破って2者が生還、この回3点をあげて11-5とし勝負あったかに見えた。

自由ケ丘・長浜本塁打 自由ケ丘は初回、四球で出た今宮を百崎が送って一死二塁。塚本死球の後、4番・天野がセンター前にはじき返して先制。福山は右飛に倒れたが、6番・中尾もレフト前にヒットを放って、二塁から塚本が生還、この回2点をあげた。3点を追う3回は、一死から塚本が中前に落とし続く天野の三ゴロが一塁悪送球となって、一塁から塚本が生還して2点差とした。3-8で迎えた6回は7番・小森が四球を選び、岡本が送って一死二塁。今宮四球のあと、百崎の中前打で1点を返した。7回には天野が左翼スタンドに本塁打を放ち、3点差に追い上げた。
 6点差で迎えた9回は、8回から登板した九州国際大付の2番手・前田から先頭の3番・塚本が右中間三塁打を放ち反撃の口火を切ると、一死後、途中出場の金沢が四球を選び、中尾の左前打でまず1点。小森の中前打で満塁とし、岡本の代打・上原も右前打を放って2点目。なお一死満塁の場面で九州国際大付は先発・藤本が再びマウンドに上がったが、9番・鎌田の代打・長浜が左翼スタンドへ起死回生の同点満塁本塁打を放って、土壇場で6点差を追いつく驚異の粘りを見せた。だが、続く二死二塁、さらに10回表の一死二塁の勝ち越し機を逃すと、その裏に5番手の長浜がサヨナラ打を浴びて、涙をのんだ。

▼準々決勝(26日・北九州市民)
自由ケ丘 201 001 106 0=11
九国大付 500 120 300 1=12
(延長10回)

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 両校にミスは出ながらも、お互いの打線がそれぞれ威力を存分に発揮し、力と力の勝負となったこの試合。その激しい打ち合いを最後に九州国際大付が制した。
 九州国際大付はエース・藤本が先発したが、立ち上がりは球が高かった。2つの四死球に2本のタイムリーを浴びて、あっさり2失点。ただ、それ以降は、7回までに8安打を打たれながらも3失点に抑え、打線の援護もあって11-5となった7回で一度マ自由ケ丘・長浜生還ウンドを降りた。6回には塚本の強烈な打球が右足を直撃。素早く打球を処理したものの、背負われてベンチに戻り、続投も危ぶまれた。だが7回、マウンドに戻ってくると気合を前面に押し出し、直球は130キロ後半~141キロを連発、天野に一発は浴びたものの、その気迫あふれる投球で流れを引き寄せ、その裏の3点を呼び込んだ。
 その7回、九州国際大付は3点を奪い、なお二死一、二塁。あと1点取ればコールドゲームだったが、必死にコールドを狙いにきていたように感じた。点差は開いても、自由ケ丘打線の威力を感じていたからだろう。実際、コールドを回避した自由ケ丘打線は、このまま黙っていなかった。
 9回は一死一、三塁から3連打であっという間に2点を返して、なお満塁。この時点で11-7の4点差だったが、一発出れば同点の場面で、九州国際大付は藤本をマウンドに戻した。怒涛の勢いを止めるには、藤本の気迫しかないと判断したのだろう。だが代打・長浜が内角に入ってくるスライダーをすくいあげると、鈍い音を残して打球はレフトポール際へ。長浜の前に2点目のタイムリーを放った上原もそうだが、代打で出てきていきなり結果を出すところに自由ケ丘の選手層の厚さを感じる。

 それでも勝ったのは、九州国際大付だった。9回同点とされた後も、四球と犠打で二死二塁と逆転自由ケ丘・岩田のピンチを迎えたが、藤本は塚本を三振に切ってとり、10回表も三ゴロ失で無死の走者を出したが後続を断ち、さすがエースという投球を見せた。9回に追いつかれて完全に流れは自由ケ丘だったが、まだ九州国際大付には徳俵に足を残す余裕があった。昨年は強打のチームといわれながら富山・野木・中村の3投手の安定感で優勝を勝ち取り、今年は前評判はさほど高くなかった打力で難敵を打ち破ってきた。この試合も9回を除く毎回安打。自由ケ丘が繰り出す5人の投手をことごとく打ち崩してきた。西日本短大付に続き、自由ケ丘という難関を突破し、3連覇への視野が大きく開けた一戦となった。

自由ケ丘・敗退後 自由ケ丘は、満を持して先発のマウンドに送った岩田が1回もたなかったのが誤算だった。144キロを計測した直球だったが、中山、渡辺にはじき返され力んだか、2つの四球で走者をため、味方の失策と永岡の2点タイムリーなどで大量失点につながった。昨秋ベスト8の原動力となった岩田は、春の大会には登板せず、秘密兵器的な存在として夏を迎えた。3回戦の東海大福岡戦でその実力を発揮した背番号18番の剛腕投手も、九州国際大付の前に沈むことになった。
 それでも19人の選手が出場する総力戦を戦った自由ケ丘の選手たちには、全体的にやり切った充実感が漂っていた。サヨナラ打を打たれて泣き崩れる選手たちをベンチの選手全員で迎えにいき試合終了の挨拶に向かった姿は、激しいレギュラー争いを演じながら一丸となって戦ってきた今年のチームを象徴していたように感じた。

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