2016夏の大会を展望する③~投手編




 今年は例年になく好投手が目白押しです。昨年夏から今年の春にかけて観戦してきた中で、注目したい投手たちを一度、整理しておきたいと思います。昨秋にまとめた注目選手との重複もかなりありますが、今年見た選手たちはその印象も記載しました。評価はもちろん独断と偏見によるものですので、ご了承ください。

九産・梅野5◆梅野雄吾(九産大九産・3年)球速S/変化球A/制球力A
 今大会のNO.1投手といえば、やはりこの投手になるでしょう。常時140キロ超を計測する直球に鋭いスライダー、カットボールがコーナーに決まれば、打ち崩すのは至難の業。秋には気持ちが乱れると制球を乱す場面もありましたが、本人もそのへんは意識して修正を試みています。春季大会は登板がなく、福岡地区大会準決勝(対福岡第一戦)では、6イニングスを投げて4安打2失点で四死球1奪三振7。ノーヒット・ノーランを達成した秋季大会準決勝に比べると、球威・伸びとも、物足りなさが残りました。ただ、制球重視で抑え気味に投げていた印象で、いろいろ試しながら投げている感じでもありました。調子が戻っていないのか、進化した姿を見せてくれるのか…夏の大会でその答えが出ます。有力な控え投手がいないことから夏はほぼ1人で投げることになりそうですが、大会終盤に、どこまで調子を維持できるかがカギとなりそうです。

◆濱地真澄(福岡大大濠・3年)球速A/変化球B/制球力S大濠・濱地
 この投手も昨夏から何度も取り上げており、もはや語りつくした感があります。柔らかなフォームから繰り出す直球の切れが素晴らしく、内外角低めの絶妙のコースにビシビシと決めていきます。球速も好調時には140キロ中盤まで出してきます。変化球もスライダー、カーブとありますが、やはり直球の質の高さで勝負するタイプ。今年に入って直球の切れ、制球とも苦しんでいるようですが、それでも悪いなりに試合を作り、失点を最少で抑えるのが、この投手のもう一つの持ち味です。剛速球や切れある変化球で三振を積み重ねるタイプではありませんが「勝つ投球」ができます。昨夏や秋のように、切れのある直球を内外角にビシッと決める、惚れ惚れとするような投球をこの夏も見たいと思います。

九州・岩田◆岩田将貴(九産大九州・3年)球速C/変化球S/制球力A
 梅野、濱地の活躍に隠れてしまった感がありますが、昨春センバツのマウンドを経験し実績は二人に勝るとも劣りません。左からのサイドハンドから多彩な変化球を操り、凡打の山を築きます。直球は120キロ台ですが長いリーチと球もちのよさから、打者は手元で球速以上に伸びているように感じるのでしょう、差し込まれるシーンも目立ちます。四球も少ないため無駄な失点がありません。センバツでは初戦で敗れたものの近江(滋賀)を相手に4安打2失点に抑え全国レベルを証明。敗れた試合でもほとんどを3点以内に抑えており、大崩れするシーンがありません。走者を出してからも、巧みな牽制や、一球一球フォームに微妙な変化をつけるなど工夫を凝らし簡単には点を許しません。打線の援護のない試合も多く孤軍奮闘が目につくマウンドですが、どこまで辛抱して投げることができるかに尽きると思います。

西短・谷口2◆谷口碧(西日本短大付・3年)球速B/変化球A/制球力A
 春の福岡大会優勝投手です。130キロ台中盤の直球を、外角低めに決めてきます。変化球はカーブに鋭く落ちるスライダーがあり、ピンチにはこの球で三振も取れます。これらの持ち球をうまく組み合わせながら、的を絞らせずに打ち取っていきます。春先は四死球も多く、特に立ち上がりは不安定でしたが、試合を重ねるごとに改善してきました。投げる時にやや首が動くフォームが気になるところですが、9回を投げ切るスタミナも十分。ただ、ほとんどの試合を一人で投げてきているだけに、梅野投手同様、大会終盤に疲労と戦いながら、どこまで本来の調子を維持できるかが優勝へのカギを握りそうです。

小倉・中野◆中野裕斗(小倉・2年)球速B/変化球A/制球力A
 130キロ台中盤の直球に、切れのあるスライダーを組み合わせる投球で、安定感があります。四死球も1試合あたり2~3個程度と制球力にすぐれ、常にストライク先行の投球は、見ていて安心感があります。直球、変化球とも凄みのある球ではありませんが、ピンチにも感情を抑えて淡々と投げ込み、コーナーをきっちりと突いてきます。延長10回にもつれる投手戦となった昨秋準々決勝・祐誠戦では粘り強く投げて完封、準決勝の九産大九州戦では6回途中で自責点2と、九州大会出場の原動力となりました。今春は準々決勝で九産大九州に敗れましたが、5安打2失点の好投を見せ、ひと冬越えても安定感は健在です。

東筑・梅田◆梅田祥伍(東筑・3年)球速C/変化球B/制球力A
 細身の左腕ですが、粘り強さが身上です。直球は120キロ半ば台ですが切れがあり、スライダーやカーブなどの変化球を交えながら低めに集めてきます。内角を突く攻めの投球も見せ、特に右打者の膝元いっぱいに変化球が決まると、攻略は容易ではなさそうです。走者を出してからも丁寧に投げ、牽制やフィールディングも優れており、簡単に点を与えないしぶとさがあります。春季大会も準決勝で福岡大大濠に敗れましたが3失点の好投を見せました。立ち上がりがやや不安定なことと、スタミナに課題が残りますが、控え投手も複数いるため、自分の任されたイニングをキッチリ抑えてくるでしょう。

九国・藤本◆藤本海斗(九州国際大付・3年)球速A/変化球B/制球力B
 180センチの長身から、しなやかなフォームで140キロ前後の伸びのある直球を投げ込んでくる、右の本格派。落差のあるチェンジアップのほかスライダー、カーブなどの変化球もあります。2年生だった昨春の九州大会でもマウンドを経験しており、新チームからエースナンバーを背負いますが、秋春ともパート決勝で敗退。ここぞという試合で自分の投球ができませんでした。自由ケ丘に5回8失点と打ち込まれた春季大会パート決勝では、変化球が決まらず、直球を狙われることになりました。中3の時に九産大九州・岩田投手、東邦・藤嶋投手らとともに、ジュニアオールジャパンのメンバーに選ばれた逸材だけに、注目が集まります。

柳原2◆柳原優太(自由ケ丘・2年)球速A/変化球A/制球力B
 多彩な投手陣を誇る自由ケ丘にあって、抑えの役割を果たすことになりそうなのがこの投手。140キロを超える直球と、切れあるスライダーを武器に三振の取れる投手です。特に低めへのコントロールがよく、ここに伸びのある直球やスライダーが決まると、打ち崩すのは難しそうです。春季大会ではパート決勝の九州国際大付戦、準々決勝の西日本短大付戦と、力のあるチームとの試合で終盤に登板。計5イニングスを投げて2安打1失点、奪三振6与四死球1とまずまずの投球を見せました。まだ2年生ですが、この投手もジュニアオールジャパンのメンバーということで、今後の成長が期待される一人です。

福岡第一・比嘉◆比嘉基貴(福岡第一・3年)球速A/変化球B/制球力B
 体は決して大きくないのですが、トルネード気味に始動しスリークォーター気味のフォームで、体を目いっぱい使って投げ込んできます。回転の良い直球に威力があり、左投手独特の大きなカーブと、切れのあるスライダーで三振も取れる投手です。ただ、直球、変化球とも高めに浮くと福岡地区大会準決勝の九産大九産戦のように痛打を浴びることになりますので、低めにコントロールできるかがポイントになります。

福岡第一・藤野◆藤野幹大(福岡第一・3年)球速B/変化球B/制球力A
 身長185センチと長身で、その長いリーチを生かしてサイドハンドから直球、スライダーを繰り出してきます。文字通り横にスライドするように流れるスライダーを、右打者の外角低めに集めます。コントロールのよい変化球投手との印象ですが、直球にも威力があるうえ、制球力があるためテンポよく投げてきます。ピンチにもしっかり粘ることができ、気持ちも表に出すタイプということで、試合終盤のリリーフでの登板が多くなりそうです。

山村◆山村晃輝(希望が丘・3年)球速C/変化球B/制球力A
 昨夏は5回戦の東福岡、準々決勝の八幡南戦で好投を見せ、同校のベスト8進出に貢献しました。右のアンダーハンドから繰り出す右打者の外角低めに逃げるスライダーを武器に、両コーナーに球を散らして内野ゴロを打たせて取るのが身上です。昨秋は準々決勝で九産大九産に延長戦の末、敗れましたが粘り強く投げぬきました。右の軟投派の代表ともいえる投手です。

◆山中優(筑陽学園・3年)球速C/変化球B/制球力A筑陽・山中
 秋は初戦で敗れましたが、優勝した九産大九産を相手に6安打2失点の好投。春は4月の福岡地区大会準優勝の原動力となりました。球威はそこまでありませんが、直球と変化球をコーナーに集めて丁寧に打ち取っていきます。福岡地区大会準決勝の東福岡戦では11安打を浴びながら1点に抑えて勝利に導くなど、走者を出してからの粘りがあります。

祐誠・橋爪◆橋爪海人(祐誠・3年)球速B/変化球B/制球力B
 昨夏は主に救援としてマウンドを経験しましたが、新チームでは先発の柱として活躍。昨秋の小倉との準々決勝では9回まで4安打無得点に抑える好投を見せました。直球は130キロ前後ですが、球速表示以上に伸びているように見えます。この直球に鋭く曲がるスライダー、抜いたカーブなど変化球を低めに集めて、内野ゴロを打たせる投球が持ち味です。

◆森田康平(朝倉・3年)球速B/変化球A/制球力B朝倉・森田
 昨夏準々決勝・九州国際大付戦で7回2安打無失点の好投を見せた大型左腕。力のある直球と右打者の膝元に沈み込んでくるスライダーが武器です。秋以降の活躍が期待されましたが、秋春とも初戦敗退と結果が出ていません。昨夏は背番号3でファーストとの兼任でしたが、エースとして夏のマウンドに立つ今年はどのような投球を見せてくれるでしょうか。

筑紫丘・井上◆井上颯太(筑紫丘・3年)球速B/変化球B/制球力B
 小柄な左腕ですが力強いコンパクトなフォームから、力のある直球と、ブレーキの利いたスライダーを繰り出します。ストライク先行でテンポのよい投球を見せ、スライダーをウイニングショットに三振を取る力もあります。

◆今山幹太(北九州市立・3年)球速B/変化球B/制球力B北九州市立・今山
 生で観戦したのは1イニングだけですが、直球のスピードがかなり出ているなという印象でした。これに縦に落ちるようなスライダーを投げます。この二つの球種が低めに決まれば、三振もかなり取れると思います。

◆石本大虎(九九国・石本州国際大付・3年)球速B/変化球B/制球力B
 直球と大きなカーブを外角低めに集める、制球力にすぐれた投手です。球威はそれほど感じませんが、走者を背負ってからも冷静に低めに球を集めることができます。春季大会3回戦では強打の星琳に9安打を浴びながら完封。エース・藤本投手との両輪として活躍すれば、今年も九州国際大付は面白い存在になりそうです。

 

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