【観戦記】神村学園6-5東福岡(秋季九州大会準々決勝)




第135回九州地区高校野球大会 準々決勝 (2014年10月27日・月/北九州市民球場)

TEAM   1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11  R  H E
東福岡        
    5 
            18 
<東>ヒンブル(7_2/3)→福島(3)(二)山本航
<神
>北庄司(11)  (二)木戸、井原、都甲、児玉

【東福岡】 打安点 【神村学園】打安点
⑥   日   高  500 ④ 都 甲 631
⑧ 野 原 512 ⑨ 木 戸 530
⑨ 大 木 500 ⑦ 田 中 520
② 河 野 410 ⑧ 山 本 541
③ 山本航 523 ③ 松 元 500
④ 樋 口 410 ② 豊 田 310
⑦ 西 山 200 ⑤ 児 玉 423
⑤ 久 我 400 ① 北庄司 510
① ヒンブル300 ⑥ 井 原 521
1 福 島 100                         
振四犠盗残  38 5 5  振四犠盗残 43 18 6
46309      265016    

 【試合経過】
 毎回のように塁上を賑わせながら東福岡の先発・ヒンブルに要所を抑えられてきた神村学園が9回に2番手の福島を捕らえ同点に追いつき、延長11回サヨナラ勝ちで準決勝進出を決めた。

 3点を追う神村学園は9回、田中、山本がいずれも中前打で出塁。松元は痛烈な左直に倒れたが、豊田が四球を選んで一死満塁とすると、続く児玉が右中間に走者一掃の二塁打を放って一気に同点に追いついた。その後は児玉が三盗を試みて失敗。二死走者なしから北庄司の中前打と井原の遊内野安打と悪送球で再び一、三塁とサヨナラのチャンスを作ったが、都甲が左飛に倒れ、延長戦に入った。

 それでも神村学園は11回、豊田が一塁左へのゴロを放ち、投手ベースカバーが遅れる内野安打となって出塁。児玉も三遊間を破って無死一、二塁とすると、北庄司が送り、最後は井原がセンターに犠牲フライを打ち上げ、豊田がサヨナラのホームを踏んだ。

神村・豊田生還2

神村サヨナラ生還2 序盤は東福岡が相手のミスを逃さず得点を挙げて主導権を握った。初回、日高が三ゴロ失で出ると野原が送って一死二塁。大木は一邪飛に倒れたが、河野が四球を選んだあと、山本航が中前に落ちる適時打を放って先制。3回も一死後、野原の遊前への詰まった当たりをショートがファンブルする失策を誘って出塁。大木の二ゴロで二塁封殺されたが、河野の三塁正面の高いバウンドのゴロがサードがバウンドを合わせられず左前に抜ける安打となり、二死一、二塁。続く山本航が右中間二塁打を放って2点を追加した。
   だが、4回以降は神村学園・北庄司の前に8回まで無安打に抑えられ、四球の走者を2人出しただけ。9回に3回以来となる安打(右前打)で出塁した樋口を西山が送り、福島、日高の連続四球で作った二死満塁から野原が一、二塁間を破る2点適時打で5-2とし勝負あったかに見えたが、2番手の福島が神村学園の強打を抑えることができなかった。

 東福岡の先発・ヒンブルは3回に山本の中前適時打、8回には井原、都甲の連続二塁打でそれぞれ1点を失ったが、8回途中で降板するまで11安打を打たれながらも要所を締める粘りの投球を見せた。

東福岡・山本先制打2

東福岡・河野生還2

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【所感】
 東福岡の先発・ヒンブルは前日の創成館戦で7回3分の1を投げた。中盤以降は球数も増え、創成館の強打者を相手に慎重な投球を余儀なくされた結果、球数以上に疲労しているように感じた。そしてこの日、連投となるマウンド。北九州市民球場ではこれまで130~133キロ出ていた直球が、この日は120キロ台後半が中心。ここぞという場面では130キロ台の球を投げていたが、7回に入ったあたりから疲労の色は隠せなくなった。
 7回こそ、3安打1四球を与えながらも、左前打で一塁から三塁を狙った走者を7-6-5の中継プレーで刺す味方の堅守にも支えられて無得点に抑えた。しかし8回二死を取ったあと9番・井原、1番・都甲に連続2塁打を浴びたところで、ついに降板。連投ながら神村学園の強力打線相手に8回途中まで2失点なら、満点に近い内容だろう。
 抜群の制球力を武器に、130キロ超の伸びのある直球に鋭く曲がるスライダー、タイミングを外すカーブなどを自在に操る。投球術にも秀でており、投手としての完成度は高い。あとは7回以降を乗り切るスタミナがつけば…というところか。

東福岡・ヒンブル3

 東福岡は9回に2点をあげてリードを3点と広げ、マウンドには創成館戦でも抑えを務めた福島投手。勝利は目前かと思われた。だが前日に2イニングスで4つの三振を奪った130キロ台後半~140キロの直球をことごとくはじき返された。この回だけで5安打、うち3本はヒンブルにあわせて10打数1安打と抑え込まれていた7~9番が放ったもの。多少の速さの直球なら問題にしない神村学園打線。手ぐすねを引いて待っていたその直球が、まんまと餌食になった。
 福島投手は投手に転向して間もないこともあり、まだ素質だけで投げている感じを受ける。それでも140キロの速球を投げられるのだから、これからどこまで伸びるか注目される。スライダーを投げていたようだがなかなかストライクが取れず、直球に頼らざるを得なかった。直球を生かすためにも変化球の制球力をつけ、緩急がつけられるようになると手強い投手になりそう。サヨナラの走者となった一塁内野安打も一塁カバーが遅れたもの。フィールディングやカバーリング、牽制などもこれから磨いていきたい。

東福岡・福島投手(神村戦)

 打線は神村学園・北庄司の前に5安打。しかしそれでも犠打や相手の失策、四球を絡めて5得点はソツのなさを示すものだろう。バントは全員がほぼ失敗なく決める。特に日高、野原、久我などは絶妙のところにうまく転がす。この試合も9回無死一塁で西山はサードの猛烈なダッシュで圧力を受けながらも一塁側にきっちりとスリーバントを決めた。
 その一方で、神村学園のように鋭い当たりを繰り出す迫力にはやや欠ける。九州大会2試合で野原が3安打4打点、山本航が2試合で5安打6打点と気を吐いた以外は全体的に低調で、その時に好調な選手の活躍次第、という側面も。葛谷監督が「飛び抜けた選手はいない」というのも頷ける。ひと冬超えて、絶対的な信頼を置ける打者が出てくるか。

東福岡円陣

 神村学園の北庄司は右サイドハンド。直球は130~135キロをコンスタントに出し、この日見た最速は137キロ。同じく連投のマウンドとなったが、8回まで3安打に抑え芯で捕らえられた当たりも数えるほど。これといって特徴のある投手ではないが、制球もよく安定感がある。
 18安打を放った打線は、大会屈指の前評判に違わぬ迫力。特に上位打線はいずれも鋭い当たりを連発、18安打のうち12本を都甲、木戸、田中、山本の1~4番で叩き出した。課題といえば3失策を記録した三遊間の守備か。

神村・都甲適時打

神村・北庄司投手

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