夏の福岡代表校を振り返る⑦(第16回大会・小倉工)~小倉工黄金期の幕開け




1930年(昭和5年) 第16回選手権大会/小倉工(初出場) 優勝=広島商(広島)③
 

 長い福岡県勢の低迷期を打ち破り、県勢9年ぶりとなる全国大会の舞台を踏んだのは小倉工。翌年、翌々年と春夏連続出場し、5季連続で甲子園の土を踏んだ。
 昭和11年までの6年間にわたり、春の選抜大会に5度、夏の選手権に4度出場。文字通り福岡県に君臨し、代表の座を独占。小倉工の黄金時代の幕開けの年でもあった。

 この年は優勝した広島商に2回戦で逆転サヨナラで敗れたが、植田延夫-西村馨のバッテリーをはじめ、4番・新富卯三郎、藤本成志・山田悟の二遊間コンビ、レフト・松井保など若い選手が多く、この時の経験が翌年夏の全国ベスト4につながっていく。

 新富はのちに大日本東京野球倶楽部(のちの巨人)の精鋭19名にも選ばれてアメリカ遠征に加わる。帰国後入隊のため退団、一度除隊となりプロ野球・阪急に入団してプレーしたが、その後再び召集され、ビルマ戦線で戦死を遂げている。

【1回戦】
 鹿児島二中(現甲南)の柳場投手の前に苦戦した小倉工だったが、逆転勝ちで接戦をものにした。小倉工は初回、新富のタイムリーで先制。だがその後は追加点を奪えず、6回に逆転を許した。8回になって高橋のタイムリーで同点とした後、植田の中堅への飛球を浅い守りの中堅手が後逸、中継して本塁に投じた送球も逸れ、この回3点を挙げて勝負を決めた。

【2回戦】
 初戦に続き投手戦となった。6回まで1安打、二塁を踏めなかった小倉工は7回の二死から藤本が四球を選び二盗。続く藤本の中前安打で待望の先制点を挙げた。投げては小倉工・植田投手が8回まで広島商打線を3四球のみのノーヒットに抑える力投。8回裏に2つの四球と遊ゴロ失で一死満塁のピンチを背負うが、灰山を遊ゴロ併殺に仕留めて切り抜け、勝負あったかと思われた。

 だが9回、先頭の杉田が二塁左へのゴロ(記録は内野安打)で一塁への送球が逸れる間に二進。保田が四球で出た後、重盗を決めて無死二、三塁。土手は三振に倒れるが、八林が中前にはじき返して同点。さらに久森四球で再び満塁となり、竹岡の投手左へのゴロが内野安打となって、保田がサヨナラのホームを踏んだ。

 広島商は灰山投手の2安打5四球と安定した投球を見せ、守備陣も無失策でしのぎ無駄な失点を許さなかったことが、土壇場での逆転を呼んだ。

▶福岡県代表の甲子園成績

◇1回戦(8月13日/甲子園=以下同)
            一二三四五六七八九 計HE
小 倉 工  1 0 0 0 0 0 0 3 0  4 5 4   

鹿児島二中  0 0 0 0 0 2 0 0 0  2 3 3
<二>植田
【小倉工】 打安【鹿児島二中】打安
4 重 住 50 6 中 川 31
6 山 田 40 5 上 原 50
8 高 橋 41 2 本 山 30
5 新 富 32 3 三 宅 31
1 植 田 31 1 柳 場 30
2 西 村 40 4 米 盛 40
3 藤 本 41 7 浅 海 20
9 野 田 40 9 西 郷 30
7 松 井 20 8 福 重 41
振 四犠盗残 33 5   振四犠盗残 30 3
104026     77139
 ◇2回戦(8月17日/甲子園)
       一二三四五六七八九 計HE
小 倉 工  0 0 0 0 0 0 1 0 0  1 2 4   

広 島 商  0 0 0 0 0 0 0 0 2  2 3 0

【小倉工】 打安 【広島商】 打安
6 山 田 40 8 竹 岡 41
7 松 井 40 9 田 中 40
8 高 橋 31 3 太 田 30
5 新 富 40 1 灰 山 30
1 植 田 40 5 杉 田 21
3 藤 本 20 6 保 田 30
2 西 村 31 2 土 手 40
9 古 田 00 4 八 林 41
4 野 田 30 7 久 森 30
振四犠盗残  27 2   振四犠盗残  30 3
85034      670410
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