【観戦記】筑陽学園1-0興南(秋季九州大会準々決勝)




 筑陽学園・西舘、興南・宮城の息詰まる投手戦となったが、タイブレークの延長13回に筑陽学園がサヨナラ勝ちをおさめ、ベスト4進出を決めた。
 無死一、二塁で始まった13回、筑陽学園は5番野田の代打・中上が一塁前へバント、これが内野安打となり無死満塁。続く福岡の一ゴロをファーストが本塁へ高投し、弥富がサヨナラのホームへ滑り込んだ。
 序盤、押し気味に試合を進めたのは興南。二回、三塁強襲安打で出た4番知念を新垣が送り、一死二塁としたが後続が凡退。4回も一死から3番勝連の右前打と知念の四球で一、二塁の好機を迎えたが、新垣が三ゴロ併殺打。5回も四球で出た6番遠矢を宮城が送り一死二塁としたが得点できなかった。
 6回まで無安打に抑えられていた筑陽学園は、7回一死から4番江原が右前に初安打を放ったが、続く野田がニゴロ併殺打。9回は一死から1番中村が右中間を破り、一気に本塁を突いたが三本間に挟まれて憤死。10回は二死から野田の右翼線三塁打を放ったが、6番福岡が遊直。11回も三ゴロ悪送球と犠打で一死二塁としたが後続が倒れ、宮城から得点を奪えなかった。
 興南は11回、宮城の左前打と金城の死球で無死一、二塁としたが、9番西江のバスターが投直となり二塁走者が戻れず併殺。タイブレークとなった延長13回は無死一、二塁から代打照喜名の投前バントが失策を誘い無死満塁としたが後続が倒れ、力投する宮城を援護できなかった。

▼準々決勝(22日・藤崎台)
興  南 000 000 000 000 0=0
筑陽学園 000 000 000 000 1=1 (延長13回/タイブレーク)

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 どちらかを敗者にしてしまうにはあまりにも惜しいハイレベルで見応えのある投手戦、しのぎ合いだった。
 筑陽学園は、前日の小林西戦の9回に好救援を見せた西舘が先発。この日最速139キロの直球にスライダー、チェンジアップ、カーブを低めに集め凡打の山を築いた。低めの変化球をひっかけさせる打球が目立ち、実に23のアウトが内野ゴロ。2・4・5回と得点圏に走者を背負ったが、いずれも内野ゴロで打ち取った。4・5回に2つの四球を与えたが、6~10回はスリーボールにすることもなくテンポ良く投げ、一人の走者も許さなかった。
 一方、興南の宮城も最速143キロの直球にスライダーを自在に操り、筑陽学園の打者を翻弄。スライダーは右打者の懐に食い込むように鋭く落ち、左打者には大きく外に逃げていく軌道で空振りを奪い9回までに12奪三振。四球も1つだけで、ほぼ狙ったところに制球できている感じだった。前日に142球を投げているとは思えない切れ味と制球力で、7回一死まで1本のヒットも許さなかった。

 8回までは両校とも得点の気配がなかったが9回以降、少しずつ試合が動き始めた。9回の筑陽学園は一死から中村が右中間を破る長打で三塁に向かい、一死三塁のサヨナラ機到来と思われたが、中村は三塁も蹴って本塁へ。さすがにこれは無謀な走塁で三本間で憤死。続く10回にも二死から野田が右翼線三塁打を放つも福岡は遊直で、二度のチャンスを逸した。
 こうなると流れは興南へ。11回、宮城が5回以来の出塁となる左前打。さらにボークで無死二塁、続く金城はバント失敗などで0-2と追い込みながら死球を与えピンチが広がる。ただ興南は続く西江がバントを決められずに二、三塁に送れなかったのが痛かった。0-2からバスターに出るが、これが投直となり痛恨の併殺打、一瞬にしてチャンスが潰えた。

 試合は両校無得点のまま、無死一、二塁から始まるタイブレークへ。興南は代打・照喜名が三塁前に絶妙のバント、これを処理しようとした西舘が足を滑らせて(記録は犠打と失策)無死満塁。筑陽学園内野陣は1点も与えない前進守備を敷くと、続く遠矢のショート右への当たりを中村が体勢を崩しながら捕球、そのまま一回転して本塁へ好送球し三走を封殺。大きなプレーが飛び出した。続く宮城の当たりはライト正面のライナーで三塁走者はスタートを切れず二死。最後は西舘が渾身の直球で金城を三振に仕留めて得点を許さなかった。
 13回裏、今度は筑陽学園が無死一、二塁から5番野田に代えて中上をバント要員として送り込むと、中上は一塁方向へうまく転がし、セカンドの一塁カバーが遅れ満塁。最後は福岡の一塁ゴロが本塁悪送球を呼んで弥富が生還した。

 筑陽学園は西舘の好投に加えて、内野陣の堅い守りが光った。バント処理で西舘に失策が一つ付いたが、それ以外は完璧な守備。23個もゴロがあると1つくらいはミスがあってもおかしくないが、確実なプレーで流れを相手に渡さなかった。
 進藤も経験豊富な捕手らしく、勝負処ではこまめに西舘の元に歩み寄り、意思の疎通を図るなどバッテリーの呼吸もピタリ。2試合連続で敵失によるサヨナラ勝ちだったが、得点を許さない鉄壁の守りに最後は相手が根負けした感がある。
 宮城も、抜群の制球力と冷静なマウンドさばきで、堂々たる投球だった。連投ながら延長に入っても140キロを超える直球を投げ続け、驚異のスタミナも披露。最後も打たれたわけではなく無念の敗戦となった。明日の準決勝の結果や神宮枠にセンバツの望みを託すことになるが、もう一度甲子園のマウンドに立ってほしい投手だ。


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