これまで強打で勝ち上がってきた沖学園が投手戦でも力を発揮し、九産大九州に競り勝って初優勝を飾った。
 初回、2回と先頭打者を出した沖学園は、初回はヒットエンド・ラン失敗による盗塁死、2回は送りバント失敗で得点圏に走者を進めることができなかったが、3回は一死から9番平川がニゴロ失で出ると、1番阿部がレフトフェンス直撃の二塁打を放って一死二、三塁。続く市川のニゴロの間に平川が先制のホームを踏んだ。しかし4回以降は九産大九州の村上を打ちあぐみ、4回二死二塁、6回一死一、二塁、7回一死二塁と得点圏に走者を進めながらも追加点が奪えなかった。
 九産大九州も1~3回と四球や安打で出た走者を犠打で二塁に送って、得点のチャンスをうかがったが、決定打を欠き得点を奪えなかった。6回は四死球と内野安打で二死満塁と一打逆転の場面を作ったが6番三島が中飛に倒れ、これが最後の得点機となった。7~9回はいずれも三者凡退に終わり、力投する村上を援護できなかった。
 沖学園の先発斉藤は、多彩な変化球を使って九産大九州打線を翻弄。許した安打は2本、4つの四死球を与えたが要所を締めて完封した

▼決勝(24日・北九州)
沖 学 園 001 000 000=1
九産大九州 000 000 000=0

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 西日本短大附、東福岡、福岡大大濠などに強打で打ち勝ってきた沖学園。ここまでは、どちらかといえば打線の援護に助けられてきた斉藤が、決勝の舞台で2安打完封の好投を見せて、最後に存在感を際立たせた。
 この日もスライダー、シンカーなど変化球を主体にした投球。序盤はボールが先行し、初回、2回と四死球の走者を得点圏に進められたが、後続をきっちりと抑えた。適度な荒れ球で狙いを絞りにくいのも斉藤の特徴の一つ。2安打のうち1本は村上に変化球を合わされてセンター前に運ばれたもの。もう1本は小中の内野安打だが、バットの先に当たった打球がサードの前に転がったもの。芯で捕らえられた打球もあったが変化球を合わせただけのものが多く、いずれも外野手の守備範囲内に納まった。7回以降は走者を許さず、反撃の気配すら与えない。これまで対戦してきた相手に比べると打力ではやや劣る九産大九州打線ということもあったが、危なげない内容だった。
 守備では変化球をひっかけた内野ゴロがが目立ったが、ショート阿部が三遊間の深いところからたびたび強肩を披露。サード市川も失策が一つあったが、9回には三遊間寄りの痛烈な打球を倒れ込みながらショートバウンドで好捕するなど守りでも斉藤を盛り立てた。
 打線は村上のスライダーに苦しみ、4安打に抑えられた。それでも3回、一塁に走者を置いて阿部が放った一打はレフトスタンドを直撃する大きな当たり。外角低めのスライダーで決して甘い球ではなかったが、力でレフトに運んだ。続く市川のニゴロで決勝点が入っただけに、この斉藤の一打が決勝打と言ってもよいだろう。俊足強打のトップバッターとして注目された強打者も決勝まで打率は2割台だったが、最後に大きな仕事をしてのけた。

 沖学園は、日替わりでヒーローを輩出しながら快進撃を続けた。3回戦の西日本短大附戦は斉藤が12四死球と苦しむ中、序盤に飛び出した市川の満塁弾が利いた。大一番となった準々決勝の東福岡戦では沖島の先制本塁打で主導権を握り、9番平川が逆転のタイムリーを放った。そして決勝では打線が凡打を重ねる中で斉藤の好投。つかみどころがなく、粗削りながら意外性や伸びしろを感じさせるチームで、個性的で奔放な選手たちを、若い鬼塚監督が枠にはめずにうまく力を引き出しているように見えた。甲子園でも伸び伸びとしたプレーが見られそうだ。

 九産大九州にしてみればロースコアの競り合いという、願ってもない展開に持ち込めた。走者が出ると一死からでも犠打で二塁に送り、ひたすら得点の機会をうかがった。しかし5度の得点機を逃し、斉藤が一枚上だったと言わざるを得ない。芯で捕らえたいい当たりは散見されたが、変化球を合わせただけの打球が多く、内野や外野の間を抜くような強烈さを欠いた。

 村上は、立ち上がりから冷静なマウンドさばきが光った。初回先頭の阿部にヒットを許したが、次打者に2-1となったところでヒットエンド・ランを予測、一塁走者を十分けん制したうえで直球を高めに外し気味に投げ、空振り~二盗失敗を誘った。スライダーがこの日もよく切れ、直球のスピードは135キロ前後にとどまったが、7回二死三塁の場面ではこの直球を内角低めに投げ込み、3回に二塁打を許した阿部を空振り三振に仕留めた。4回以降はレフト前へのポテンヒット1本しか許さず、沖学園の強力打線を封じた。

 守備陣もよく守った。4回吉村の三塁線の難しい打球、抜けていれば無死二塁という場面だったが、サード小中が逆シングルでうまくバウンドを合わせて抑えた。その後、二死二塁からの沖島の三遊間のゴロを捕ったショート黒木は一塁が間に合わないと見るや、二死ということでスタートを切っていた二塁走者を見て三塁でアウトをとった。
 残念だったのは、3回の唯一の失点が二ゴロ失がきっかけとなったこと。試合終了後、最後まで立ち上がれなかったのがセカンドの城野汰だった。しかしこの打球は一・二塁間を抜けそうな当たりを回り込んで抑え、不安定な体制からの一塁送球が逸れたもので、内野安打と言ってもよい当たりだった。準々決勝の筑陽学園戦、準決勝の香椎戦と貴重なタイムリーを放ち、地味ながら堅実なプレーでチームの躍進に十分貢献した背番号14を、誰も責めたりはしないだろう。

 南福岡大会でも沖学園や福岡大大濠、久留米商など打力を看板にしたチームが勝ち上がる中、守りを固め、少ない点数を守り切る九産大九州の野球は派手さはないが、しっかりとした練習の跡を感じさせた。特に準々決勝の筑陽学園戦での終盤から延長にかけての凌ぎあいは、見ごたえのある内容だった。継投が当たり前となっている中、細身の体で全5試合を一人で投げ抜き抜群の安定感を見せた村上は、甲子園切符は得られなかったが、大会ナンバーワン投手の称号を勝ち取ってマウンドを去った。