センバツ21世紀枠、九州地区推薦校の行方を展望する




 来春開幕する第90回選抜高校野球大会の「21世紀枠」の九州各県推薦校が出揃いました。このあと、12月15日に九州地区推薦校が選出され、来年1月26日のセンバツ選考委員会で全国9地区の推薦校から3校が選ばれます。福岡の県推薦校・小倉が九州地区推薦校に選ばれるかどうか注目されますが、独断と偏見によりその行方を展望してみたいと思います。
 まず、各県の推薦校は以下の通りです。(選出理由は毎日新聞記事などから抜粋)

【福 岡】小倉(公立=県ベスト4)
 近年の県上位に食い込む実力・進学校として学業と野球の文武両道が他校に良い影響
【佐 賀】伊万里(公立=九州大会出場、初戦敗退)
 学業と両立しながら短い時間で部活動に励んでいる
【長 崎】長崎工(公立=県ベスト8)
 資格試験の合格率も高く、文武両道を実践している
【熊 本】熊本商(公立=県ベスト8)
 熊本地震による困難な環境を克服し、検定取得など学業と部活動を両立
【大 分】大分舞鶴(公立=県ベスト8)
 平日2時間という練習環境の中、学業と部活動を両立。早朝の清掃活動などで地域に貢献
【宮 崎】福島(公立=県ベスト8)
 平日2時間の練習時間で質の高い工夫をした内容で補い、地域の祭りや清掃活動などに参加
【鹿児島】鹿児島情報(私立=県ベスト4)
 近年安定したチーム力を維持
【沖 縄】石川(公立=県ベスト4)
 生徒数減少による一時期の部員減を乗り越え、野球部の存在が学校の活性化につながっている

 以前の記事でも触れたように、九州地区では過去17回のうち16回までが「直前の九州大会に出場した公立校」が21世紀枠の推薦校に選ばれており(センバツ21世紀枠推薦校一覧)、県大会で優勝もしくは準優勝する程度の実力が求められます。今年この条件に該当するのは伊万里だけで、九州地区推薦校の最有力候補と言えます。

小倉のエース・河浦投手

 では、伊万里ですんなり決まりかというと、必ずしもそうではなさそうです。まず「各県推薦校のうち直前の九州大会に出場したのが1校だけ」というケースは非常に珍しく、過去に2013年の一度しかありません。そして2013年は、その唯一の九州大会出場校(多良木=熊本)が九州地区推薦校に選ばれなかった年でもあります。
 この年、多良木は九州大会初戦(2回戦)で宮崎2位の日章学園に0-3の5安打完封負け。しかもその日章学園は続く準々決勝で神村学園に6-10で敗北。多良木は九州地区推薦校の選考において、実績面でかなりのマイナス評価を受けたと思われます。例年であれば、九州大会に出場している別のチームが比較対象となるのでしょうが、この年は他に九州大会出場校はなかったため、九州大会不出場ながら「離島のハンディを乗り越え、春秋ともに県ベスト4」が評価された大島(鹿児島)が、九州地区推薦校に選ばれました(その後、21世紀枠にも選出)。今年の伊万里は九州大会初戦で沖縄尚学に0-8で3安打完封負け。その沖縄尚学も準々決勝で創成館に3-8で敗れるなど2013年と状況がよく似ており、実績面でマイナス評価を受けての落選という可能性がなきにしも非ず、と言えます。

 伊万里に代わって浮上するとすれば、どこでしょうか。鹿児島情報は私立校ということでまず厳しそう。九州大会で決勝進出した県からの選出も例がないため長崎工と福島の可能性も低そうで、残るは小倉・大分舞鶴・熊本商・石川となります。その4校の選考理由を見ると、小倉=「近年の実績と文武両道」、大分舞鶴=「文武両道と地域貢献」、熊本商と石川は、それぞれ「熊本地震」「部員減少」という「困難な状況の克服」などが挙げられています。
 この中では熊本商が優位と思われます。被災地からの選出は21世紀枠の趣旨(自然災害など困難な環境の克服)にも沿っており、本来であれば昨年、地震で大きな被害のあった熊本から選ばれても不思議ではありませんでした。ただ昨年は秋の九州大会で秀岳館・熊本工がベスト4に残り、一般枠での熊本勢2校選出が濃厚だったことも影響したか、熊本県推薦校(球磨工)の九州地区推薦校は見送られました。そのぶん、今回改めて考慮されることは十分考えられます。あとは、県ベスト8という実績がどう評価されるかですが、2013年に21世紀枠で出場したいわき海星は、前年秋の県大会ベスト16ながら選ばれた前例もあります。
 実績面では県ベスト4の小倉と石川が上位(熊本商、大分舞鶴はベスト8)ですが、小倉は県大会準決勝で九州大会ベスト4の東筑と延長戦の末に惜敗。一方の石川は沖縄大会準決勝で沖縄尚学に0-9の7回コールド負けで、沖縄2位の興南も東筑に敗れていることから、両校の実績を比較した場合は小倉が優位となりそうです。あとは小倉の推薦材料(「東筑と接戦を演じた準決勝の評価」「文武両道が他校へよい影響」「近年県上位に進出しながらも、今春センバツでベスト8に2校残った激戦区・福岡で甲子園出場を阻まれている」)が、熊本商のそれを上回るインパクトが与えられるかどうかでしょう。

 まとめると、順当なら九州大会出場の伊万里、推薦理由では熊本商、実績(実力)が重視されれば小倉、という感じでしょうか。ちなみに少し気の早い話ですが、小倉が九州地区推薦校に選ばれると夏の選手権2連覇(昭和22、23年)など高校野球史に残る実績があるだけに、21世紀枠の選考では話題性からも優位に働くのではないかと思います。実際、旧制中学時代に甲子園を沸かせた伝統校として2015年に桐蔭(和歌山中時代に夏2回、春1回の全国制覇)、2010年には向陽(海草中時代に昭和14、15年の選手権連覇)が選ばれており、小倉の伝統は大きな武器になりそうです。まずは12月15日の発表を、期待を胸に待ちたいと思います。




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