【観戦記】福岡第一6-3福岡大大濠(選手権大会2回戦)




福岡大大濠の好投手・濱地にしぶとく食らいついた福岡第一が、運も味方につけて8回に逆転、春の九州大会王者を破った福岡一・浅川適時打

1点を追う福岡第一は8回無死から2番・具志堅が中前打で出塁、続く桃原は6-4-3の併殺打に倒れ、チャンスが潰えたかに見えた。しかしここから藤本が四球で出ると、川越はセンター前に落ちる二塁打を放ち二死二、三塁。6番・三宅の当たりはショート前へのボテボテのゴロとなったが、送球を焦ったショートがお手玉をして(記録は失策)、まず同点。なお一、三塁から7番・後藤もショート前への弱いゴロとなり、これが一塁間一髪セーフとなって(記録は内野安打)逆転。さらに藤野四球で満塁とし、9番・浅川がレフト線にダメ押しとなる2点二塁打を放って、一気に試合をひっくり返した。

福岡第一、初回は5番・川越のタイムリー二塁打で先制。1点を追う6回表には一死から3番・桃原の右越え本塁打で同点に追いつき、8回の逆転劇につなげた。先発の比嘉は足がつって降板する6回まで9安打を浴びたが、3失点で踏ん張った。2番手・藤野は急な登板にも関わらず、サイドハンドからの伸びのある直球と武器に7回以降を無失点に抑え、福岡大大濠に反撃を許さなかった。

福岡大大濠は初回、3番・古賀のタイムリーで同点に追いつくと、4回には7番・濱地の左中間本塁打で勝ち越し。同点とされた直後の6回にはこの回先頭の4番・東が左中間に本塁打を放って勝ち越した。だが、続く二死二、三塁の追加点のチャンスをものにできず、7回以降は福岡第一の2番手・藤野を打ちあぐんだ。9回も先頭の9番・松本が一ゴロ失で二塁まで進み、斉藤投ゴロの後、平野もレフト前に落ちるヒットで一死一、三塁と食い下がったが、古賀が4-6-3の併殺に倒れて及ばなかった。

福岡大大濠の先発・濱地は、四死球こそ3つだったが細かな制球に苦しんだ。8回は不運な当たりが続いたが、高めに浮いたところを福岡第一打線にとらえられ11安打を浴び、本来の実力を発揮する前に、今夏のマウンドから姿を消した。

▼2回戦(14日・春日公園)
福岡第一 100 001 040=6
福大大濠 100 101 000=3  

大濠・濱地
福岡大大濠・濱地

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昨年の夏、主役だった春のセンバツ出場校・九産大九州を完封して金星を挙げ、一躍脚光を浴びた春日公園野球場。今年、主役として戻ってきたその舞台で、濱地の短い夏が終わった。

ついに絶好調の濱地は戻ってこなかった…というのが、この試合の濱地の投球を見た率直な印象だ。スピードの乗った球は来ているが、すっぽ抜けも含めて高めに浮くことが多く、そこを福岡第一打線に捕らえられた。本来、濱地のよさは、140キロを超えるスピードもさることながら、この直球が伸びるように内外角低めギリギリに決まるところにある。140キロを超える球を投げる投手が複数いる中で、なぜ彼が点を取られないのか、という理由もここにある。昨夏の九産大九州戦、敗れはしたものの5回戦の飯塚戦、秋の福工大城東戦、九産大九産戦などはコーナーギリギリにこの伸びる直球がビシビシ決まった。だが、この日は松本捕手の構えたところに球が収まることは少なかった。

問題の8回、先頭の具志堅にこの日3本目となるヒットを許す。ここで前の打席で本塁打を放っている桃原を迎えた。だが、ここは渾身の直球で押し込み、併殺打に打ち取る。大きなピンチを乗り越え、勝負あったかと思われた。

福岡一・比嘉
福岡第一の先発比嘉

だが、藤本にはスリーボールと再び制球を乱し、直球で押してフルカウントまで追い込んだが、最後はスライダーを見極められて四球。続く川越の当たりはセンター前への飛球、深く守っていた平野が懸命に前進して飛びつくが及ばず、二死ということでスタートを切っていた一塁走者も三塁へ。これで二死二、三塁。三宅はショート前への弱い当たり、ショートの古賀がダッシュして捕り、一塁送球しようとしてファンブル。記録は失策だが、一塁に投げていても微妙なタイミングであった。これで同点。
さらに後藤も同じような当たり損ないのショート前へのゴロ。古賀は今度は確実にさばいて一塁送球するが、これが間一髪セーフ。後藤が左打者だった分、わずかに足が勝った。ここで切っておけば、まだ1点差で分からなかった。続く藤野は空振り三振かと思われたが、ファールチップを捕手がこぼしてファールとなり、結局四球となって満塁。浅川には高めに浮いた直球を左翼線に運ばれ、決定的な3点差となった。不運な当たりが3本続いたのはやむを得ないにしても、浅川への投球はこの日の調子を象徴しているようにも思えた。

福岡一・藤野
福岡第一・藤野

打線は11安打で3点。本塁打が2本あったことを考えると、5安打を集めた3回までに勝ち越しておきたかった。ただ、福岡第一の比嘉、藤野も好投手。福岡大大濠にしてみれば3-2で勝たなければならない試合だった。

福岡第一は投手陣の踏ん張りが、8回の逆転劇を呼び込んだ。先発の左腕・比嘉もよく直球が走り、変化球にも切れがあった。7回攻撃前の投球練習中に、足がつってマウンドを降りた比嘉に代わり、急きょ登板した藤野も直球がコーナーによく決まった。3イニングスで4三振を奪ったが、そのうち3つが見逃し。この日2安打1本塁打の4番・東の打席では、外を攻めて右方向へファールを2本打たせた後、最後は内角低めギリギリに直球が突き刺さり、東は手が出なかった。桃原生還

打線は11安打放ったが、詰まったりボテボテとなるヒットも多く、濱地を打ち崩したという印象ではない。それでも高めに浮いた球や甘く入ってきたところを見逃さず、振り切っている分、ヒットになった。6回の桃原の一発は圧巻。昨春も140キロ超の直球を投げる東福岡の福島投手から2本塁打しているように、速いたまには強い打者だ。ダメ押しタイムリーを放った浅川も9番ながら、今春は九産大九産・梅野から本塁打を放っている。

平日の試合にも関わらず、大勢の観客が詰めかけた注目の一戦は、粗削りながら長打力もあって意外性のある打線が、濱地を沈めた。

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