行橋の出場辞退に思う




 福岡大会開幕を直前に控えた7月3日、福岡県高校野球連盟から行橋高校の出場辞退が発表されました。部員2人が退部したことで人数不足となったようです。退部の理由は分かりませんが、この時期の退部はとても残念でなりません。

 行橋は登録が10人でしたが新聞に掲載された登録選手を見ると遠賀=9人、嘉穂総合=10人、福岡常葉=11人、筑豊=12人、若松商=13人など、余裕のない人数で試合にのぞむ高校は他にもあります。怪我や体調不良などで出場できなくなる事態も想定されるわけで、無事に試合当日を迎えられることを祈るばかりです。

 夏の大会に出場するチームには「甲子園出場」「県大会出場」「1勝」など、それぞれ目標があるでしょう。その中に「まず大会に出場すること」を考えなければならないチームが毎年のように存在することも事実です。1年生を勧誘して最低9人を揃える。それが第一の目標になります。人数を揃えるために未経験者にも声を掛けることになりますが、うまく入部してくれたとしても、まずは野球の基本から教える必要があります。もちろん数カ月で身に付く技術はたかが知れており、監督さんは勝敗の前に「まともな試合ができるか」を心配しなければなりません。そして、そういうチームがいきなり甲子園を狙うようなチームと対戦する理不尽さ…。その絶対的な対等性が高校野球の厳しさ・残酷さであり、同時に魅力の一つでもあります。

 しかしこうした残酷さも、やがて社会という厳しい現場に出ていく球児たちにとって貴重な経験だと思います。大人の社会はよくも悪くも平等な世界です。特に民間企業では期間中にどれだけ結果を残せたかで、その人の評価の大部分が決まります。「準備期間が短かった」「経験がなかった」などの言い訳はもちろん通用しません。時間がなくてもやらなければならない。経験がなくても進めなければならない。そういう場面はたくさん出てきます。

 部活動の一環である高校野球は結果も大切ですが、仕事と違ってそのことで絶対的な評価を受けるわけではありません。むしろこの時期に問われるのは「結果を出すためにどういう取り組みをしてきたか」だと思います。ですから球児の皆さんには、部員が少なくても、技術的に未熟でも、これまでやってきたことを信じて試合にのぞんで欲しいと思います。勝利を目指して突き進み、結果として敗れたとしても、いま自分が持っている力を出し切れたと思えたなら、それでいいと思います(とはいえ、そう簡単には割り切れないことも理解しているつもりではありますが…)。

 そんな若者たちの挑戦を、今年もスタンドから見守りたいと思います。


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